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スイス

スイス連邦、通称スイスは、中央ヨーロッパに位置する連邦共和制国家。永世中立国であるが、欧州自由貿易連合に加盟しているほかバチカン市国 の衛兵はスイス傭兵が務めている。歴史によって、西欧に分類されることもある。

ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれた内陸に位置し、国内には多くの国際機関の本部が置かれている。 首都はベルンで、主要都市にはチューリッヒ、ジュネーヴ、バーゼル、ローザンヌなどがある。

スイスは内陸国であり、国土はスイス高原が大半を占めている。また、国土は日本の約1割で九州より約1,500km2 広い。なお、総面積は日本の内陸県のうち岐阜県、長野県、山梨県、群馬県、栃木県を併せた面積に相当する。

政治

スイスは、連邦国家であり連邦議会を最高機関とする議会統治制、つまり立法府が行政府を兼ねる統治形態をとっている。 連邦議会は両院制で、直接選挙で選ばれる200議席の国民議会と州代表の46議席の全州議会から構成される二院制である。

立法府を兼ねる連邦政府は、連邦議会から選出される7人の連邦参事で形成される合議体である。内閣は、ドイツ語圏の諸国と 異なり連邦参事会と呼ばれる。7人の連邦参事が各省を統括し、その中の1人が連邦参事兼任のまま任期1年の 連邦大統領となる。連邦議会の議場と連邦政府の各省庁のオフィスはともにベルンの連邦議会議事堂Bundeshausの中にある。 大統領の権限は儀礼的なものに限られる。

また、スイスの連邦参事は議会の獲得議席数に応じて自動的に割り振られる。そのため、政党は一定の議席を得ている限り、 また意図的に下野しない限り自動的に連立与党の一員となる。マジック・フォーミュラーも参照のこと。 国民の政治参加に関して、国民発議と国民投票という、直接民主制の制度が憲法上で認められているのも大きな特徴である。

議会

国民議会、全州議会共に任期は4年で、解散はない。

憲法

スイス連邦憲法は、連邦政府に委任すべき事項を規定している。憲法に規定のない事項については州政府が主権をもつ。たとえば参政権 の規定は州政府に主権があり、1971年に憲法で婦人参政権が確立したあとも、1990年に至るまでアッペンツェル・ アウサーローデン準州では婦人参政権が制限されていた。憲法改正は比較的容易であり、10万人の改正要求があった場合 は改正提案に対する国民投票が実施される。

税制

スイスでは連邦政府、州、市町村の3段階の行政組織が課税権を有している。税率は平均20%。それぞれが独自に税率を設定できるため、 個人の税率を低く設定して外国の富裕層の取り込みを図る州もある。

法人税についても優遇措置をとっており、外国から本社をスイスへ移転する企業がある。そのため、 OECDの有害税制リストに挙げられている。

軍事・安全保障

スイスにおける国防の基本戦略は、拒否的抑止力である。敵国にとって、スイスを侵略することによって得られる利益よりも、 スイス軍の抵抗や国際社会からの制裁によって生じる損失の方が大きくなる状況を作り出すことによって、国際紛争を未然に防ぐ戦略である。 2002年の国連加盟後も、この基本戦略は変わっていない。

現代におけるスイスは、国軍として約4,000名の職業軍人と約21万名の予備役から構成されるスイス軍を有し、 有事の際は焦土作戦も辞さない毅然とした国家意思を表明しながら、永世中立 を堅持してきた平和・重武装中立国家として知られる。

スイスは国際連合平和維持活動(PKO)への参加に積極的で 、国外に武装したスイス軍部隊を派兵しているが、決して武力行使をせず、PKOでは武器を用いない人道支援に徹している。

仮に、国境の封鎖に失敗して外国の侵略を受けても主要な一般道路には戦車の侵入を阻止するための障害物や、トーチカが常設してある。 東西冷戦の名残で、2006年までは、家を建てる際には防空壕の設置が義務づけられていた。その数・収容率と強固な構造は 、他国の防空壕と比べても群を抜いている。古い防空壕は、地下倉庫や商店などとしても利用されている。

バーゼルは、内陸国であるスイスが水運を通じて海とつながる唯一の貿易港となっている。20隻の哨戒艇 が主力である船舶部隊は、有事の際にはライン川を遡行する商船を臨検、徴用することとなる。

スイスでは国民皆兵を国是としており、徴兵制度を採用している。20歳から30歳の男性に兵役義務があり、女性は任意である。 スイス男性の大多数は予備役軍人であるため、各家庭に自動小銃が貸与され、予備役の立場を離れるまで各自で保管している。

対戦車兵器や迫撃砲などより大型の武器は、地区単位で設置されている武器庫に収められ、厳重に管理されている。 スイス製の兵器は高い性能を誇っている。

それでも、政府が食糧を計画的に備蓄し、スイス軍の施設と公立の学校については核戦争への備えとして 核シェルターが常設されている。民間でも、過去には自宅や職場にシェルターを装備する義務があったが、 現在では撤廃された。それでも、任意でシェルターを装備している企業や個人が多いことで有名である。

経済

世界銀行によると、2020年のスイスの購買力平価ベースの一人当たり実質GNIは69,190ドルで、カタール、シンガポール、 ルクセンブルク、アイルランドに次いで、すべての国の中で世界第5位となっている。

国際通貨基金によると、2013年のスイスのGDPは6,508億ドルであり、世界第20位である。同年の一人当たりのGDPは8万1,323ドルであり、世界でもトップクラスの水準である。 2016年の一人あたり国民総所得(GNI)は84,240ドルで、世界第2位である。

なお、スイスは世界でもっとも国際競争力の高い国のひとつであり、2011年の世界経済フォーラムの研究報告書において、 世界第1位の国と評価された。富裕層も非常に多く、9.5%の世帯が金融資産で100万ドル以上を保有しているとされる。

2016年10月14日、アメリカ合衆国財務省が為替報告書を公表したうえで、スイスの不正な為替介入の有無を監視するようになった。 通貨のスイスフラン(CHF)は「金(地金)よりも堅い」と言われるほど、世界でもっとも安定した通貨である。

資源・エネルギー

スイスにおけるエネルギー部門は、その構造と重要性から先進国の典型として現在も世界各国の手本にされている。

チューリッヒに本部を置くABBグループが世界規模で事業展開しており、 同社が1988年に吸収したスウェーデン企業のASEAは地中海を取り巻くスーパーグリッドの敷設に参画している。

スイスの鉱業は、岩塩の採掘のみに頼っている。浅海の堆積物と海水が褶曲、もしくは押しかぶせ断層によって地層中 に閉じ込められたことに由来し、採掘量は2002年時点で30万トンである。ただし、岩塩精製ではカリウムが副産物として得られる。 グレンコアが世界各地でレアメタルを掘っている。

金融

スイスには中世からの銀行業の歴史があり、多数の金融機関がある。UBS、クレディ・スイスなど、日本に進出している銀行もある。 スイス銀行と言われる個人銀行は、顧客の情報の守秘義務に関して国際的に有名で、刑事事件が起こっても、 原則として顧客の情報は外部に漏らさない。

このことからマネーロンダリングの中継地として、しばしばスイス銀行の口座が使われることがある。 この秘密主義の方針は、しばしば世界的な批判の的となっている。有力者の資産隠しに口座が使用されている疑惑を持たれている。

観光

観光産業はスイス経済にとって重要な分野のひとつであり、スイスの総就労人口の約4%が観光産業に従事している。 たとえば2015年、スイスの観光産業は3560万人の宿泊客を迎え入れ、その収益は174億フランに達し、国内総生産の約2.8%を占めた。 2015年、ヨーロッパからスイスへともっとも多くの宿泊客が来訪した国はドイツであり、約400万人であった。

スイスの主な観光地は、チューリヒ、山岳地域のグラウビュンデン州、ベルン州、ヴァリス州などである。 第二次世界大戦後にはウィンタースポーツがさかんになり、スイスでもウィンタースポーツが楽しめる保養地として人気を集めた。 最近ではスイス政府観光局などスイスの観光関連組織は、インド・ロシア・中国などといった新興国からの観光客を迎えるために努力している。

交通

スイスの鉄道はSBBが主要幹線を網羅しており、山岳部では、私鉄の登山列車などが運行している。空港のある都市は、 チューリッヒ・ジュネーヴ・バーゼル・ベルン・サメーダン・ルガノなど。

日本からの直行便は、スイス インターナショナル エアラインズのチューリッヒ・東京便とチューリッヒ ・大阪便がある。チューリッヒ空港では、ドイツ語の案内放送のあと、英語で案内放送がある。 他にも、ドイツやオーストリアのようにアウトバーンと呼ばれる高速道路を持っている。

科学技術

パラケルススやフェルディナン・ド・ソシュール生誕の地域として知られており、学問的分野ならび科学技術が 最も発達している国家の一つに数え上げられる。 スイスでは天然資源と成り得るものが殆ど存在しない為、科学技術は同国経済の発展において重要な役割を果たしている。

国民

スイス人が約8割いる。 欧州内の移民が多く、もっとも多いのはイタリア29万5,507人、次にドイツ22万4,324人となっているが、 特に旧ユーゴスラビア諸国出身者は非常に多く、35万人前後にもなる また、中東からはトルコ人も7万5,382人と多い。

2004年には、3万5,700人がスイス国籍を取得した。その半数以上が旧ユーゴスラビア諸国出身者である。 スイスは世界中から多くの難民を受け入れている。 しかし移民に対する反発は根強くある。

言語

スイスでは、各地方の地理的・歴史的な理由から使用言語が分かれているためドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語 の4つを公用語と定めている。これに合わせ、スイスの公共放送・SRG SSRも、4つの公用語を使用して放送している。

北部と中部ではおもにドイツ語が使われている。 西部ではフランス語が、南部ではイタリア語が使われている。

婚姻

婚姻時、2013年以前は夫の氏が優先である。正当な利益があれば、妻の氏を称することもできる。 自己の氏を前置することもできるとされていたが、2013年以降、 婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持すると変更され、完全な選択的夫婦別姓が実現された。 配偶者の氏に変更するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない。

宗教

スイス国民が信仰する宗教は、カトリックが人口の約43%、プロテスタントが約35%と、この2つでほとんど大部分を占める。 ほかにはイスラム教が約4%、正教会が約2%、ヒンドゥー教、仏教、ユダヤ教などが、各1%未満であり、約11%が無宗教となっている。

医療

ユニバーサルヘルスケアが達成され、市民は公的または民間保険会社から医療保険を購入する義務があり、 保険者は引き受けを拒むことはできない。

医療制度はほかの欧州諸国と比べ費用は高いがアウトカムは良好であり、患者の満足度は高く、2017年のEuro Health Consumer Indexでオランダに次いで 34か国中総合2位であった。2016年での平均余命は83.3歳で、日本に次いで世界2位であり、男性は世界一、女性は世界5位となった。

生活

市民の生活満足度は高く、国連世界幸福度報告では第2位、OECDの人生満足度ではデンマーク、アイスランド に次いで第3位、世界幸福地図では世界178か国で第2位であった。

スイスでは他者の人権の受け入れ、汚職の少なさ、情報の自由な流れ、良好なビジネス環境、高いレベルの人的資本、資源の公平な配分、 十分に機能する政府、および近隣諸国との良好な関係によって決まる2022年の「積極的平和指数」で世界第5位を獲得した。

スイスでは、国際基準による高水準の動物福祉政策ならび保護政策を行なっている。 非実在児童ポルノに対しては違法ではあるが、そこまで厳しく罰することは行われていない。

スイスは現在、車の排気ガスによる大気汚染や水資源の水質汚染が深刻となっている。 また、生態系においては生物多様性の喪失に直面しているといった危機的状況が問題視されている。

治安

スイスの治安は比較的良好であるといわれているが、スイスの犯罪統計によれば、2019年の犯罪件数は43万2,000件となっている。 内訳は、財産犯罪が286,207件で約66%を占めるほか、殺人:46件、傷害:8,347件、脅迫:10,834件、性犯罪:8,189件等が挙げられる。 また麻薬法違反:75,757件(-0.7%)、入国管理法違反:37,024件(-3.6%)とされている。

文化

食文化

アルザス料理も含むドイツ料理、フランス料理、イタリア料理といった周辺の国や地域の影響を受けながらも、 スイス特有の多くの料理を有する。

スイスは歴史的な農業国であり、伝統的なスイス料理は素朴で、ジャガイモとチーズのような質素な食材で作る傾向がある。

映画産業

国内における言語の違いと文化的多様性が、スイスにおける映画史を形づくっている。ドキュメンタリー映画、 アートフィルムや実験映画、そして大衆的な商業映画が存在し、 作品群についても作家たちについても、情報源の多様さより以上の多様性が存在している。

世界遺産

スイス国内には、ユネスコの世界遺産リストに登録された文化遺産が7件、自然遺産が3件存在する。

スポーツ

スイス国内ではサッカーが最も人気のスポーツとなっており、今から120年以上前の1897年にプロサッカーリーグの「スーパーリーグ」 が創設された。サッカースイス代表はFIFAワールドカップには12度の出場歴があり、1954 FIFAワールドカップは自国開催されている。 UEFA欧州選手権には5度出場しており、2021年大会では過去最高位のベスト8の成績を収めた。

1954年から2016年まで、スイス国内でモータースポーツを開催することが認められていない時期があった。しかし、スイスを拠点に 国外で活躍する有力なレーシングチームやレーシングドライバーはこの期間中も普通に存在していた。 ただし、時計を通じて争うタイムアタックだけのレースは認可されていたため、ラリーやヒルクライムのイベントは開催されていた。

その他の競技 スイスではテニスも盛んであり、有名な選手としてはロジャー・フェデラーが挙げられる。ウィンタースポーツも盛んで、 スキージャンプ、アルペンスキー、スノーボード、カーリングといった競技も行われている。